住所不定な日記(6/29〜7/7)
引越しに関わる1週間ちょっとの日記。
6/29(日)
実家を出て、新幹線で東京へ移動中。
道中はブログを書いていた。

自分の引越しを面白がって、なぜか同行してきた東京住みの友人を連れ、新居で鍵を受け取った。
新しい住宅は会社から指定されたマンションの一室だ。
格安で住める代わりに場所は選べず、間取りもわからない。ミステリーツアーというか闇鍋ガチャというか。
共用部分は意外と新しめできれいな物件だった。これは当たりを引いたか。
管理人の女性から鍵を受け取り、いざ初入室。
......あれ、なんかある?
えっ、ここ社員寮なの?机と椅子もうあるの?洗濯機って共用なの?
知らなかった。大変なことになってしまった。
今使ってるダブった家具、どうしよう。
洗濯機なんて引越し屋に取り付け手配して日程確定してるんだけど?
いかんせん、大型家具3つを1日で全て処分するのは、アラサーになって未だに車を持っていない自分の手に余る。
情けないが、とりあえずその場で父親に電話。
「机と椅子と洗濯機を積みに、来週の土曜、(6月まで住んでいた)津まで来てください......」
友人はベッドフレームに腰掛けてケラケラ笑っていた。他人事だと思って。他人事なんだけど。
この日はスーパーの下見をしたり、ニトリに行ったり、浴室のカビ予防と居室のゴキブリ予防まで済ませた。終始大荷物で大変だった。

荷物の搬入は来週なので、今日は宿無しとなる。
今は友人宅近辺で飲んで、泊めさせてもらっている。初日はまだ観光っぽい気分だったが、一人だと精神的に辛かっただろう。
明日はもっと大変そうだな。

ホッピーの現物を初めて見た記念
6/30(月)
ホテルで。
前担当の最終出勤日だが、引越し準備のため有休を取っている。
今日は新居のガス開栓に立ち会い、なんにもない部屋の拭き掃除を済ませた。転入届と免許証の住所変更も済ませた。ここまでやれてよかった。鍵取得とガス開栓と搬入と掃除が同日だったら大変なことになっていた。というか新居に洗濯機が届いて確実に詰んでいた。
会社が用意してくれているホテルに16時ごろチェックイン。
余裕だ。近場を散歩してラーメンを啜った。三重はラーメン不毛の地だったが、この辺りは逆にラーメン激戦区らしい。美味そうな店がゴロゴロしている。

つけ麺屋の和え玉。まあまあ。
この二日間の動きは上々だったと思う。
ただ、「一人が気楽」だとか「東京に行きたい」とか、頭で思っていたものの、いざ一人で引っ越すと忙しいし知らない土地だしで意外と心細い。
こっちの友人が面白がって来てくれて助かった。
7/1(火)
新たな職場で初出社。
挨拶とオリエンテーション、環境のセッティングをしてたら初日の業務が終わった。
どうやら、完全に別分野からこの担当に入ってきたのは自分だけらしい。ミーティングで聞こえてくる専門用語や略語は何も理解できなかった。一応、自分を採った上長は、自分がマジの素人なことは把握しているらしいが……
所属するチームと、頻繁に関わるらしい隣のチームの共催で懇親会があったので参加した。
唯一の遠方から来た若者ということもあるだろうが、自己紹介がけっこうウケて今後への滑り出しは上々。三重からいい日本酒を2本持って行った*1のもよかった。
会話が弾んだ人の名前をメモした。
懇親会で上司と挨拶をしたときの話。
自分「しばらくは何もわからない状態ですが、なんとか食らいついていきますので——」
上司「そもそも1,2年で成果が出るとは思ってなくて、(何もできないところから)どこまでやれるかが楽しみだ」
と、なんとも言えない笑みで告げられた。試されてる——
7/4(金)
3日間の出勤を終え、引越し準備や所用のため三重に戻っている。
本来この日に研修を予定されていたのだが、遠方からの引越しでどうしても休みを取りたくて、迷ったが申請した。上司のなんとも言えない表情——
14時
この一週間で、周りとのレベルの違いを知った。仕事量、知識、経験、その他業務改善のための行動量やスピード感が、自分含むこれまで会ってきた支店の人とは段違いだった。完全に置いて行かれていた。
あと、仕事ぶりから伝わってくるエネルギーに圧倒されてしまった。言葉を選ばないと、今まで会社で見た人たちは、「ゆったりやる」人か「意識高い系」の人がほとんどだった。だからゆるゆると仕事ができたのだが、能力のある人が全力で仕事をする現場に初めて来て萎縮してしまった。
また、自分があまりに頼りないこと、さらに自分が頼れる人もいないことに対するストレスがとんでもないことに気付いた。
さらに、ある事情で自分だけ使うシステムや根本の働き方の違いもあり、仕事の進め方がこれまでと全く変わってしまった。
「みんな当たり前にできることができない。自分だけなんか違う」ということの疎外感が苦しい。
同日に一緒に転入した人は、どうやら近い部署から来ているようだった。初めから勝手もわかっており、さっそく案件を貰って活躍している。完全に置いていかれている。
まあ他の人はキャリアも役職も持ってきてるから比べるのも筋違いだが。
今の状態だと、当初危惧していた、忙殺されることによるストレスとは別の理由で潰れそうだ。
対処法は、やはり一刻も早く仕事を覚えることしかないように思う。でも、何もわかっていない今の状態から、何に手をつければいいのだろうか。
これからやっていけるだろうか...…
(7/6追記)
1日の懇親会で会話が弾んだ人たちの名前を控えておいたので、空いてる時間で雑談でもしに行こうと思っていたが、とてもそんなことできそうになかった。
これまでの事務所に比べて会話が少ない。雑談はほぼない。全員が忙しそうだ。
自分が何をすることを求められているのかがわからない。何もわからない状態なので、聞きながら仕事を覚えないといけないのだが、聞きやすい相手もいない。孤独だ。
(追記ここまで)
16時
三重での用事を全て済ませて、Sion.808*2で最後の紅茶を頂いている。
とびきり佳い茶器を選ばせてくれ(「この3つは普段はお出ししない、私のとっておきなんです。最後なのでお好きなのを選んでください」*3)、
前回来店時に持ち帰りの茶葉はないか聞いていたミストバレー茶園のSPRING BLOOM*4を特別に包んでくれる心遣いまでいただいた。)
最後の注文は、前回と同じミストバレー茶園 SPRING BLOOM。

フリル状のソーサーと金の縁取りが美しい。こんなのが欲しいが普通には手に入らない。
1杯目をゆっくり口に含み、鼻から息を吐きゆっくりと嚥下した直後、1週間の緊張が一瞬で解されて涙が止まらなくなった。
静かなBGMと微かな物音が響く店内の隅になる席で、音を立てないようにして、左手で目元を隠しながら泣いた。今の自分を知るものは濡れたテーブルクロスだけのはず。
自分の中で、他者と心が通うことがこんなに重要だったとは。
「いや、早くない?」とは思うが、今後の不安に対して怯えているのなら、今がピークだろう。そうであってほしい。
......
...
2煎目。これを書きながら、スマホに反射する自分の眼が真っ赤だと気付く。だけど、涙は止まってくれた。助かった。
結局、スプリングブルームを安く譲っていただいたと思ったら、レジで量までオマケしてくれたことを告げられる。
マスター「心ばかりですが」
その心で泣いてたんですよこっちは.....!
あやうく面前で決壊するところだった。
「その心をいつもありがたく思ってるんです」となんとか返して持ち堪えた。
19時
三重に残留する同僚と最後の風呂飯。榊原温泉の日帰り温泉へ。ニフティの日帰り温泉ランキングで全国1位になってるとか。とろっとろで本当に佳い湯だ。
同僚「どうしようもなくなったら連絡して。悩んでいることをまとめて送ってくれたら、ピッタリの一曲を処方してあげよう」
そういえば、自分は東京に行ってからずっと、はっぴいえんど『春よ来い』がずっと流れている。
同僚「東京っぽい曲か......直球だけど、くるり『東京』とか。」
どんな曲?
同僚「失恋ソングなんだけど......歌詞を東京に置き換えて聴くと、夢破れて帰る前夜に、荷物を纏めて歩いて昔を思い出しながら聴く曲になる」
ダメじゃん!!
この同僚はとある旧車に乗りたくて、一気に稼ぐために早く昇格したいと言っていた。確かに頑張るなら今だ。でも、主従が逆転しないように。今の自分が「遊ぶ金欲しさに」働いていることは忘れてはならない。
最後に互いを鼓舞して別れた。
僕「お互い“自我”は保とう」
同僚「話を聞く限りだと相当殺伐としてるけど、ファイティングポーズは崩さないように」
一人だと潰れそうだったけど、今日仲のいい人と思ってることを喋ったら楽になった。気兼ねなく喋れて、アドバイスや励ましをくれる人のなんと貴重で嬉しいことか。自分は人間関係的に恵まれていたのだなと実感した。
今日のあれこれを踏まえると、自分はこの1週間、気を張り過ぎていたのだなと思う。自分の居場所を見つける工夫をしていきたい。

不思議なくらい美味い思い出の町中華。“夜ランチ”というセットがお得。
7/5(土)
AM
搬出の日。
新居に置けなくなってしまったL字デスクやゲーミングチェア、洗濯機は、頼んで津まで来てもらった両親に実家まで運んでもらった。
親がいなかったら風邪を引いている近場の友人に泣きついていたか、レンタカーを借りて半泣きで処分先を探していたことだろう。
今の暮らしは他者に依存して成り立っている。

PM
洗濯機やデスクを積んだ車に乗せてもらい、実家に帰ってきた。
ふと思い立って自分の預金口座を見る。
当初の予想よりも明らかに貯まりが遅い。
車を持っていないのを言い訳にして、毎週のように電車で遠出してるし、外食しまくってるから当然ではある......
いつまでもこの生活ができるとは限らないので、もう少し節制すべきか。これからはもっと難しいだろうが。
7/6(日)
朝
荷物搬入の日。
実家でテレビを眺めている。浅草寺周辺で街ブラ企画をしていた。何をしていても(何もしなくても)仕事への不安が止まらない。職場から持ち帰った本を読んでないと安心できない。楽しくて読んでるわけでもないのに。
上手にリフレッシュする方法を身につけないとな。今までは慣れた仕事だったので、能動的にリセットする方法は考えたことがなかった。
12時
東京行きの新幹線を待っている。
いざ東京に行く段になると、少なからず地元から離れがたく思う。東海にいたときとは違い、近場に味方が少ない、帰りたくても中々帰れないという二つの要素が郷愁を増しているのだろう。
「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」
から始まる室生犀星の詩が思い起こされる。
この詩は東京にいる犀星が故郷を懐かしむ詩だと思っていたが、実際は故郷金沢に帰っても受け入れてもらえない犀星が、
「遠い東京から『ふるさとおもひ涙ぐむ』くらいがちょうどいい」
と考えていたという解釈があるそうだ。
幼少期に東京へ養子に出され、故郷に対して愛憎渦巻く室生犀星。
対して自分の半生は(歳と共に順調にこじらせ、自意識だけが肥大化していることを除けば)山も谷も人並みで、犀星と比べるのも烏滸がましい。
それでも考えさせられるところはある。
好きとも嫌いとも言い切れない故郷。
今のところ、すぐには帰れないくらいの距離感で、ほどよく美化しながら懐かしむくらいが丁度いいかもしれないな、と考えることにしよう。
新幹線の車内。東京に行ってからのメモを見返したらまた視界が滲んできた。弱過ぎだろ。
これもまた書き残し、数ヶ月・数年後に読んだときに当時の不安を思い出し苦笑するよすがとなれば幸いである。
16時半
搬入が始まった。物が多過ぎて段ボールで身動きが取れなくなった。なんとか箱を片して、明日のネット開通に間に合わせたい。

部屋の奥に行けない
19時半
荷解き真っ最中、友人から目黒で飯に行かないかと誘われた。もちろん行くと即答したら何故か怯えられた。行かないわけがない。明日が仕事でも行ってたと思う。
2時
帰宅後もずっと荷解きをしていたおかげで、ようやく段ボールがほぼ全て開いた。本の分類や家電の配線のような細々としたものは手付かずだけど。
7/7(月)
AM
ネット開通工事の予約が入っていたため休暇を取っている。
明日から使う通勤定期を取ったり部屋の配線や整理をしたりと忙しい。段ボールはほぼ全て空けられた。
6月末から昨日まで、ずっと地に足がついていない感じがしていた。
忙しかったのはあるし、各地を転々としていたせいか、旅行や出張みたいな気分だった。
昨日見てたような日曜朝の情報番組でしか見ない地名*5が続くこの街で生活するのが他人事に思えた。
だが、こうして自分の見知った家具や本やボドゲを並べていくうちに、ようやくここが自分の家で、東京が自分の拠点となる実感が湧いてきた。何もわからない街で、この部屋だけは自分を害するものが何もないという確信があった。
セーブポイントというかセーフティエリアというか、そういうものが出来上がったような気がした。

今日までの進捗。なんとか収めたって感じ。本はこれから分類します。
PM
ネット開通が早く終わったので、皮膚科に来ている。背中や臀部の湿疹が酷くなっている。
診察したとき、「ほんとに持病はないの?糖尿病とか」と訊かれた。免疫力がかなり落ちて菌に感染していたらしい。
2,3か月前から気になり始めていたが、市販薬で済まさずにもっと早く行けばよかったな、と反省。まあ最近は毎週忙しかったし、難しかったか。
結局、チューブの塗り薬を一気に8本も処方された。
今後も不摂生になりがちな生活だが、なんとか体調は維持していたい。
維持じゃダメか。もっと良い生活をせねばならない。

新居での初自炊は冷凍餃子。IHと1口コンロとは一生和解できない気がする。
おわり
こんな感じです。これからも元気でやっていきます。
*1:作 槐山一滴水・福和蔵 純米大吟醸 の2本。日本酒好きでなくても飲みやすいものをセレクト。
*2:三重で一番通った紅茶専門店。許可を貰ったのでそのうち紹介予定
*3:1つはロイヤルコペンハーゲン、残りは忘れた。値段は聞いていないが、どれも古いものでもう手に入らないのだとか
*4:正式名称は「ミストバレー茶園 MVOB-2 'SPRING BLOOM'」。ネパール紅茶の有名茶園、ミストバレー茶園が25年度の最初に、夜明け前にだけ手摘みされる最高級茶葉。大変貴重で完全受注生産品。味はダージリンに近く、最初は爽やかに駆け抜け、やがて濃い味に変わるが厭らしくなく優しくまとまっている。二煎目でも味が出て青臭くならない。文句無しの最高級茶葉。
*5:地方民は全国ネットでよくやる東京の街ブラ番組やグルメ番組を冷ややかな視線で見ている