こんばんは。
以前の日記で本をおすすめしようと文字数が思ったより増えたので記事を分けました。
ということで、早速ですが、こちらの本を紹介させていただきます。
『情報の歴史21』とは
本書は、人類の誕生から現代(2020年)までの、情報編集の歴史を網羅するという構想から生まれた壮大な世界史年表です。
初版の『情報の歴史』は「日本の電話開通から100年」を記念して、1990年にNTT出版から発行され、1996年に増補版が出てからは長らく絶版となっていました。
こちらは2021年に出版された最新増補版となります。
紙面は見開きでひとまとまりの構成をしており、年を下るほどタイムスケールは細かくなっていきます。
太古は数千年~数百年単位でまとめらていますが、1900年からは見開き1ページで1年の出来事が掲載されています。
見開きは年代に合わせて設定された5つのテーマブロックから構成されており、例えば上画像が属する1996年以降は、左から「世界政治動向」「経済・産業・金融」「思想・社会・流行」「芸術・文芸・文化」に設定されています。
「情報の歴史」と銘打っていますが、読んでみると、オールジャンルを概観しているように見えます。
確かに、文学も美術も政治も科学も、おおよそ文明と呼べるものは凡て情報編集と情報伝達の賜物だと考えると違和感はありません。
『情報の歴史21』との出会い
私が『情報の歴史21』を知ったのは、『私が愛用する辞書・辞典・図鑑』という本です。
この本は、ライター、教授、主婦、辞書マニアなど、さまざまな方が日常的に愛用する辞書・辞典・図鑑を紹介してくれます。
その中で誰かがオススメしていたのが、初版の『情報の歴史』でした。
有史以来の情報の歴史を一冊にまとめるというロマンある内容に惹かれ、いつか読んでみたい、せっかくなら最近出たらしい『情報の歴史21』が欲しい、と思っていました。
それから数か月後、縁あって大型書店で見かける機会があり、定価7,480円という圧力に怖気づきながらも購入。
ミッチリと文字が詰まって500ページ超という値段に恥じない情報量を前にして、読み物よりは道具として使おうと思い、たびたび活用して今に至ります。
弁明させていただくと、こう思ったのは文章量の問題だけではありません。
単純に読み物としても面白いはずですが、他の本と読み合わせて総合年表として使ったとき、真価を発揮すると判断したためでもあります。
利用シーン1:大正期の小説を探す・読む
最近、『大正処女御伽話(タイシヤウヲトメおとぎばなし)』という恋愛モノの漫画を再読しました。*2
その後、大正期の上向きの世相と、想像よりも開放的な恋愛観に惹かれて当時の恋愛小説を読んでみたくなりました。
最初に「大正・昭和初期の恋愛小説」でググってみて、目ぼしいタイトルは抑えていましたが、『情報の歴史21』でも探してみました。
日本文学のスペースには、当時活躍した作家や、流行した作品が載っていました。
ネットで調べるときは、小説は「大正・昭和初期の恋愛小説」という大雑把な括りで紹介されていました。
一方、『情報の歴史21』では1年ごとに分けて記載されているので、流行作品・作家の細かい移り変わりが把握できるようでした。*3
また、小説の出版前後に起こった事件や当時の技術・世相が同ページに書かれており、昔の本を読むときしばしば問題になりやすい、「作者の時代の常識が通用しない」というギャップが少し解消されました。
少しだけ、100年前の人間に寄り添いながら読めた気がしました。
ちなみに、そのとき読んだ小説は、
です。どちらもよかったですが、『痴人の愛』は本当に凄かった……。本当に100年前の小説か途中で確認しちゃいました。衝撃です。
感想はこちら。ネタバレ注意。
利用シーン2:化学史の書籍と読み合わせる
『学術書を読む』という本で、「初学者が一冊目の本選びに困ったら〇〇史の本を読め!」という主張がなされていました。
そこで、試しに『現代化学史』を読んでみました。
なるほど、これはいい!自分の義務教育レベルしかない断片的な化学知識が学問の発展と共に肉付けされていく気がする——と感動しながら読んでいました*4。
『現代化学史』の導入文で、「化学は新しい学問」と書かれていました。
1770年代、科学者たちの間では、二酸化炭素を固定空気、窒素を有毒空気と呼び、燃焼には「フロギストン(燃素)」が必要だと信じられていました*5。
ここで、同時期の他の科学分野や産業はどうだったか気になって、『情報の歴史21』を開いてみました。
そこには、「化学は新しい学問」という主張を裏付けるように、1770年代は、物理学では電気力の逆二乗の法則*6や万有引力定数が発見され、産業分野ではミュール紡績機が開発されています。
同時期だと思っていた産業革命に至っては、初めて実用化されたのは1712年で、1770年代では既に工業分野で広く蒸気機関が使われているようです。
また、横のテーマブロックに目を向ければ、アダム・スミスが『国富論』を出版したとか、イギリスで世界初の労働組合が結成されたとか、相互に絶妙に絡み合っていそうな記述が容易に見つかります。
このように、歴史上の前後関係や、あるイベントと同時期に発生した各分野の出来事が一目で概観できることは、『情報の歴史21』が手元にあることの大きなメリットだと感じます。
一人必冊
正直、まだまだ『情報の歴史21』のポテンシャルを発揮できているわけではありません。
しかし、本書を他の書籍と一緒に読み合わせることで、専門的な知識に加え、時代的に横の繋がりを得られることがよくわかりました。
本の帯に書いてある「一人必冊。驚異の世界同時年表」という売り文句は伊達じゃないと思います。
あらゆる読書家におすすめしたい、値段に見合った一冊です。
ちなみに、読書メーターには未だ「読んでる本」に入り続けています。
この本が「読んだ本」に登録できる日は来るのでしょうか。