- 2020年、流行りの音楽を勉強する
- 2022年、音楽にハマる
- 2023年、プレイリストを作る/初の単独ライブ
- 2024年、ライブハウスデビュー
- この先の話。初めての野外ライブへ。
- おわり。音楽は趣味です
ここしばらく、よく音楽を聴いています。
人によっては「音楽なんていつも聴いてるでしょ」と思われるかもしれませんが、私は音楽に縁遠い生活を送ってきました。
むしろ、音楽に対する朧げな反抗心があったとすら言えるでしょう。
かつて、通学中はノイズキャンセリングしたイヤホンを耳に詰めていました。*1
音楽を聴くときも、当時から好きだったほとんど唯一のアーティスト、東京事変か、あとは専らゲーム音楽*2を流していました。
特に、ボーカルのある曲全体と、ドラム(特にシンバル)が激しい曲全体に対して苦手意識がありました*3。思い当たる原因は、ゲーム以外で音楽を聴く習慣がなかったからか、もしくは自分が音痴だからか。
2020年、流行りの音楽を勉強する
音楽に興味がないだけならともかく、音楽を全然知らない状況に危機感を覚えたのは社会人2年目(2020年)の頃で、これにはいくつかのきっかけがありました。
- 同年代と音楽の話が合わない。これは中高生の頃から一貫した悩み
- ボドゲ「狩歌*4」が全く楽しめない上に浮きまくって、かなり気を遣わせた
- 会社の先輩と飯に行った後、カラオケに誘われたが歌える曲が無いため断り、微妙な空気になった*5
他にもあった気がしますが、今ぱっと思い出せるのはこんなところです。
このままだと永久に音楽関係がコンプレックスになると思い、意識的に音楽を聴くようにしました。
早速、アトリエシリーズとVA-11 Hall-Aのサントラを聴くためだけに入れていたAmazonMusicをUnlimitedに更新しました。最初は、流行りの音楽を知れればいいと思い、通勤中に国内ヒットチャートを延々と聞いていました。この頃は別に楽しくはなく、勉強の気分でした。
ヒット曲を粗方浚った後に攻めたのは「Myディスカバリー*6」です。
ここで知った音楽(藤井風とか夜好性*7とか)が数か月後にブレイクし、人生で初めて流行に乗れた気になりました。
「流行曲を押さえる」という当初の目的を一応は達し満足しましたが、流行というものは頻繁に移ろうものです。
その後も引き続き好きなサントラだけでなくMyディスカバリーも聴いたり、街中で聞こえる音楽へ熱心にShazamしたりしていました。
2022年、音楽にハマる
自分の中で2022年といえば、名古屋から三重に引っ越した年です。
2021年の秋ごろにスマブラを引退し、この頃は色々なゲームを触ってみたり、あとは図書館に通って本を読んでみたりしていました。
余談ですが、私の読書量が増えたのはスマブラ引退後からでした。
そう、読書。読書といえば、喫茶店*8。
喫茶店といえば、音楽を聴きたくなるもの。これは諸説ありそう。
22年、三重への引越し直後によく通っていた喫茶店では7-80年代のJ-POPや歌謡曲が流れていました。
この頃はそれに影響されてシティポップを聞いたり、Night Tempoなどのネオシティポップも聞くようになっていました*9。
このように、周囲に流れる音楽をとっかかりにして音楽を掘り進めていた日々でした。
この営みの中で、自分に刺さる音楽を見つけ、音楽鑑賞を勉強から趣味へと持ち上げてくれたきっかけが二つありました。
きっかけ①:水星 × 今夜はブギー・バック
まだ名古屋に住んでいた社会人3年目(2022年初頭)、行きつけのラーメン屋で流れていたBGMに衝撃を受けました。
なにこれ!オシャレだしうるさくない*10!気持ちいい!
と、音楽好きの中学生が初めて親のCDや深夜のラジオを聴いて抱いたであろう衝撃を、10年遅れで味わいました。*11
ちなみに、タイトルの通り、この曲は『水星』と『今夜はブギーバック nice vocal』のマッシュアップです。
このラーメン屋では、元となる曲、『水星』の主要バージョン*12と、『今夜はブギーバック』の各バージョン*13が時折ランダムに流れてくるせいで、何度来店して聴いても別の曲に聞こえてしまい、混乱して仕方ありませんでした。
我慢できずラーメン屋のマスター*14に話を聞いて、ようやく全体像が掴めました。
そして、『水星』と『今夜はブギーバック』を聴きこんで再びラーメン屋に行ったとき、更なる衝撃を受けました。
私「水星、いいですね!tofubeatsハマっちゃいました」
ラーメン屋のマスター「水星って、原曲あるの知ってる?(店内BGMに『KOJI1200-Blow Ya Mind - I LOVE AMERICA』を流しながら)」
私「え、今田耕司?……すごい、イントロのメロディーそのままだしダサかっこいい……」
マスター「しかも、これにも原曲がある(『Geisha Girls - Blow Your Mind』を流しながら)」
私「ダウンタウンだ……完全に別物なのに確かに聞いたことがある……?(宇宙猫の顔)」
こんなやりとりの後には、完全にtofubeatsのファンになってしまいました。
いや、tofubeatsのファンというのは間違いないですが、それよりももっと広く、「音楽、こんなに面白いのに放置していたのか!もっと掘らないと!」という衝動、あるいは使命感のようなものに駆られました。
きっかけ②:新東京『Cynical City』
23年春。この時期、私はマインクラフトにハマっていました。
初めてのマイクラで、黙々と木を伐り、テラコッタ山を整地し、ネザライトを掘る日々。
楽しい作業ゲーでしたが、作業ゲーというものは、どうしてもBGMが欲しくなるものです。
↑マイクラのサントラ。これはこれで作業用BGMにかなりおすすめ。↑
この時期、マイクラのお供に好んで聞いていたのは、ラジオでした。
東海地方の人間なら誰もが知る(と思っている)ラジオ局、ZIP-FMを、朝から晩まで聞いていました。
↑ZIP-FMはradikoでも聴けます。プレミアム会員ならエリアフリーで聴けるらしい。↑
ラジオは軽作業に特に向いてると思います。毒にも薬にもならない話をしてくれる(失礼?)し、たまには役に立つ情報や、ちょっと気になる曲も流してくれる。
相変わらずZIP-FMを聴きながらネザーで地底人をしていたある日、ある番組が流れてきました。
それは、東京で話題のカルチャーを名古屋へお届けする、というものらしいです。
その日は、『新東京』という現役*15大学生の新人バンドがゲスト出演していました。
【MEDIA】
ZIP-FM 4/30(sat) 放送のCULTURE RADIO via TOKYO で20:20頃から、新東京の杉田春音が出演します!
ZIP FMは名古屋(東海エリア)で放送されます。Radikoではタイムフリーで聴くことができます。https://t.co/38PverMMFt
↑番組公式HP#新東京#Metro— 新東京 / SHINTOKYO (@shintokyo_city) 2022年4月28日
↑たぶんそのときの告知ツイート。↑
トークは聞き流してました。
なんか、ドラムかベースが難しいテクニックを入れたがる~~みたいな話をしてたような……。正直ほとんど覚えていません。
このバンドはデビューしたてで、最初のEPをリリースした直後で宣伝に来ていたようです。最後に、普通にデビュー曲を紹介して、そのコーナーは終わりました。
「それでは、曲紹介、お願いします。」
「『新東京/Cynical City』です。お聞きください。」
「本日のゲストは『新東京』ボーカルの杉田春音さんでした~!」
(えっ、かっこいい……!?)
(ベースかっけえ!なんか雰囲気キモくて(誉め言葉)面白い曲見つけたかも……!?)
音楽未経験、ボーカルありの音楽をまともに聞いてきた歴すら2年そこそこの自分には、これくらいしか魅力や感想を言語化できませんでした。(2歳の赤ちゃんにしては上等でしょう?)
ともかく、自分の中で何かの琴線に触れたのでした。
すぐにブランチマイニングの手を止め(あるいは既に止まっていたかもしれない)、即ShazamしてAmazon Musicで過去の曲を探し始めました。
この時点ではまだ4曲しか発表していなかったので、すべて聴くのは容易いことです。
(え~~『ユートピアン』も『36℃』もいいな~~、でもやっぱり『Cynical City』かな~~)
等々とニヤニヤ聴きながら、掘り出し物の新人バンドを見つけたことでご満悦でした。
その後も、チャンスがあれば友人の車で流しながら、「新東京、次来るから!」と布教したりしたこともありました。
このバンドは、曲ができたらすぐにシングルとして発表し、数曲たまったらEPでまとめる、というスタイルでコンスタント(ほぼ月一ペース)に公開されていたので、飽きずに今まで追いかけ続けることができました。
自分の思う推しポイント(歌詞に文学が滲んでる気がする*16とか、ベースがブリブリ利いててかっこいいとか(語彙力)、誰にも縛られないために『新東京合同会社』を設立してセルフプロデュースしているとか、結構あるのですが、ここで書き始めるとキリがない上にパッと言語化できるほど音楽知識もないのでまたの機会にしておきましょうか。
そんなこんなで、推しアーティストを見つけて、初めて「音楽、楽しい!」と思ったのが2022年でした。
2023年、プレイリストを作る/初の単独ライブ
4月。昼曲と夜曲を分割する。
意識的に音楽を聴くようになって約3年。
当初から気に入った曲はメモ代わりに「Myいいね」へ登録していたのですが、このリストを流していると、「昼夜とか季節感とかズレてて、これを聴きたいのは今じゃないなぁ」という曲が頻発してきました。
しばらくは我慢していたのですが、「Myいいね」のリストが500件を超えた記念に、満を持してプレイリストを分割することにしました。
まず作ったのは「好きな曲(昼)」「好きな曲(夜)」の2つ。
あんまり増やすと管理しなくなりそうだったので、最低限に留めました。
プレイリスト管理へ最初に手を付けたのが23年初頭ごろ。そこからはずっと昼曲と夜曲で分類し続けてきました。
23年末ごろ、運転中に流しても(会社の人間が隣で聴いていても)問題ない曲を厳選した「乗る(昼)」「乗る(夕)*17」を追加して、合計4つの(ボーカルあり曲の)プレイリストを管理するようになりました。
その直後。音楽好きの後輩との話
昼夜でプレイリストを分割し、聴き始めたころ。
このとき、会社の自分の担当に、1歳年上で1年だけ後輩の子が3か月のOJTで来ていました。
彼とはかなり趣味が合い、なろう小説を読んでたら数か月溶けていた*18話や、
学生時代に『けいおん!』でギターを始めて挫折したが、最近『ぼっち・ざ・ろっく!』を見て買い直し、OPや劇中歌を耳コピして練習している話*19などなど、すっかり意気投合していました。
そんな彼に、
私「最近、昼用と夜用でプレイリスト作ったんだよねー」
と話をしたら、彼は嬉しそうに語り始めました。
後輩「まじすか!俺以外にやってる人、初めて見ました」
彼は、時間帯(朝・昼・夕方・夜)に加え、季節(春・夏・秋・冬)のプレイリストを作っていました。
おまけに、季節感のある曲はその季節になるまで決して自発的には聴かない徹底ぶり。
後輩「〇〇聴きたいですけど、秋まで我慢っす」
私「半年先じゃん……」
そんな話をしながら、自分も季節でプレイリスト分けたいな、と思うようになりました。
当時は知っている曲数も少なくて作る勇気が無かったのですが、そろそろいけるかな、とも思ってきました。管理が大変なのでまだ踏み切れていませんが。
8月。初の単独ライブは奈々様
参加決定。正直行くか迷った。
8月1日、ある友人からLINEが来ました。
友人「突然だが8/13ガイシホールまで来れる?」
(お盆か。ガイシホール、聞いたことあるな、コンサートホールじゃないか?)
イベントスケジュールを調べたら、やはりこの日は水樹奈々のライブがあるようです。
正直、水樹奈々の曲をほとんど知らない(唯一知っていたのはETERNAL BLAZEくらい)し、アニソンはあんまり得意な方ではない*20ので、行くか迷いました。
何より、単独ライブというものが初めてで、そこはかとない不安がありました。
これまでに参加経験のあるライブといえば、PSO2のオーケストラコンサート、ガストブランド25周年ライブ、アトリエシリーズ20周年ライブだけだったのです。
しかし、「原則、断る理由がない限り、誘いは全て受ける」がポリシーの私は、他にお盆の予定がないことを確認し、参加表明をしました。
そこそこの祭り好きを自認している*21ので、楽しめないことはないだろうとも考えていました。
参加するならとセトリを見せてもらい、曲を聴きこんで待ちました。
幸運にも、「これ生で聴けたらアツいな」という曲もできました。
ライブ当日。特攻服、初めて見た。
そして来たる13日、日本ガイシホールへ。
会場に着くと、ファンの熱量は今まで参加したどのオフイベントよりも高く、水樹奈々プリントTシャツや水樹奈々グッズ、更にはグループ全員お揃いの特攻服で身を固めた頑強なオタクたちの姿がそこかしこで見られました。
非常に物珍しい気持ちで会場入り。
会場での立ち回りや入場方法など、誘ってくれた友人が非常に頼りになりました。
会場が大きかったので、もし一人なら何かで困ってたかも。
開演。楽しかった!
ライブの感想は、
- 奈々様、歌うまっ!予習しているときに聞いた音源よりも生の方が上手い!
- これだけ歌って踊っても最後までバテないのすごいな
- ファンの熱量すごい!一曲終わるたびに近くから「奈々さーん!」「ありがとー!」って声が上がる。面白い。(コロナ後初の声出しライブだったためファンも特別気合が入っていたのかもしれない)
- 観客の振付、練度高い!
- 奈々様、リフトで飛んだ!観客に近い!ファンサ多い!
- セトリを予習していったおかげで6割くらいはわかったし、曲知らなくても意外と楽しめる!周りに合わせつつ光る棒を振り回して応援するだけでも楽しい!
といった感じでした。多数のアーティストからなるコンサートとはかなり異なる趣で、人生初の体験でした。
経験者の友人が隣で解説してくれるのでライブ中の不安感も少なく、満足度も高かったです。
ちなみに今回のライブで一番好きだった曲はアンコールの『Sweet Dealer』です。
生歌はオトナな雰囲気でエロかっこよかった。
総評して、奈々様のライブは色々な意味で行けてよかったです。
ぜひまた行きたいし、他のアーティストのライブも行ってみたいと思いました。
9月。新東京が名古屋に来る!
……と思っていたら、立て続けにライブの機会がやってきました!
2024年3月3日、新東京ライブが6都市でワンマンツアーを開催決定!名古屋にも来るという発表があり、最速購入すべくリマインダーを登録して待つことに。
会場は、新栄シャングリラ。
地理的には割と行きやすいと反面、まさに絵に描いたようなライブハウスでちょっと怖い・・・
(ちなみにライブハウスに関してのイメージ源は『ぼっち・ざ・ろっく!』と、SNSで稀に流れてくる地下アイドルのライブ映像くらい。)
ま、どうにかなるでしょ、と思いながら迎えた9月、オフィシャル最速販売の日。
初めてのe+、若干出遅れ感がありながらも、即座に購入。整理券番号は5番!
……もしかして競争率高くなかった?
2024年、ライブハウスデビュー
当日。勝手がわからない。
そして迎えた翌年3月。
直前、元日の地震の関係で復旧のための能登出張がライブに丸被りして行けなくなりそうになったり*22、
2週間前に十三騎兵防衛圏のオケコン参加のために相模原に行ったのち、現地でインフルを発症して早期帰還したり*23、
そのインフルのおかげで出張が他の人に代理アサインされたおかげで奇跡的にライブに行けるようになったり……。
とかく色々ありながらも参加の運びと相成りました。
3月3日。
何と言っても初めてのライブハウス。なんとなくソワソワして前日は中々寝付けませんでした。こんなこと、いつぶりだろう。
今回は同行者がいないソロ参加なのであれこれと聞く相手もおらず、「ライブ 服装」「ライブ 初めて 注意点」などと出発直前まで調べてなんとか不安を払拭しようと試みていました。
現地のライブハウスに着いたのは15時。開場時間の17時半よりも2時間半も前でした。
会場を確認すると、すぐに駅に戻りました。ネットの初心者向け記事で見た、
「会場は暑い。上着は会場か駅のロッカーに入れるといい。ただ、会場のロッカーを使うと場所取りに出遅れる」
という知識を真に受けたためです。駅のロッカーに上着や防寒具を全部入れて、長袖Tシャツの中に薄手のニットを着込むだけの装いで時間を潰すことになりました。
3月に入ったのに、この日の最高気温は9℃。風もあり、通行人は誰もがコートやジャケットを羽織るような寒い日でした。
(ライブってなんて過酷なんだ……!)
と震える顎を食いしばりながら、会場隣のカフェに避難し、時間を潰すこと2時間。
開場前に物販が始まっている可能性があるので、開場30分前に退店し、会場前へすぐに到着。
結局、物販は開場後のライブハウス内にあり、普通に寒空の下で30分間待つことになったのですが。
待ち時間の中で気になったのは他の客の服装。
上着、普通に着てました。
荷物になるから脱いでくるんじゃなかったのか。
入場。場所取り失敗
17時半。スタッフの指示で整理券順に並んでいた私たちは、開場時間と同時に入場しました。
整理券番号は5番。3番と4番は17時半時点で現地にいなかったので、自分が3番目の入場。これは最前列確定!
階段を下りると、スタッフのお姉さんが一人立っており、ドリンクチケットを購入。
ライブ上級者の友人から、「600円は現金ですぐに出せるようにしておけ」と言われていたので、ポケットに仕込んだ小銭を出して難なく突破。感謝。
ホールに入ったら、入口付近に物販エリアが。
ライブタオルと最新アルバムは確保しておこうと、物販エリアに一番乗り。
ライブ後は物販が売り切れるかもしれないという前情報と、整理券1~5番で入場列が区切られていたので、物販に行っても最前列は堅いだろうと思っての判断でした。
しかし、ここで痛恨の判断ミス。いつもの癖でクレジット決済にしてしまったせいで、大幅なタイムロスを喫してしまいました。
「……機械、調子悪いですか?」
「ごめんなさい、アップデートに時間がかかっております~」
「現金でもいいですけど……(紙幣を取り出しながら)」
「いえ、すぐ終わると思います」
「……(遅い遅い遅い)」
ステージ前を見ると、モタモタしている間に後続の入場者が続々と最前列を陣取っていきました。
結局、支払いが終わったころには最前列がちょうど埋まりきって、2列目が並び始めたところでした。今回の立ち位置は2列目の中心あたりに落ち着きました。
開演は18時。
他の参加者は同行者とお喋りしたり、ドリンクスタンドで交換した酒を飲んでいたり、思い思いに30分の待ち時間を潰していました。
自分は喋る相手もおらず、一人なので持ち場を空けて行列になりつつあるドリンク交換に並ぶのも躊躇われました。
手持ち無沙汰のあまり、先ほど買ったアルバムのブックレットを読んだり、持ってきていた三島由紀夫『仮面の告白』を開いてはみましたが、青い照明とLo-FiなBGMで完全にソワソワしてしまい、とても集中できません。
(ちょうど読んでいた『仮面の告白』の場面が、主人公が絵画「聖セバスチャン」で人生初のejaculatio*24をするところだったので、半分以上が女性客の会場で読むのがなんとなく気まずくなったのもある)
早々に本を閉じ、緊張の時間を存分に味わいました。
いつの間にか、300人くらいが入れるであろうライブハウスは、満杯になっていました。
開演。雰囲気だけでも伝わらないかな
7分ほど前からスマホの時計を確認する頻度が増え、ついに迎えた18時。
「18時だ」「そろそろじゃない?」「時間だよね?」といった声がチラホラと聞こえ、出演者の登場を待つ。
静寂の中で永い2分か3分を待つと、舞台袖からボーカル以外の3人が現れ、黙って楽器に着きました。ここでパラパラと拍手が上がる。
機材チェックを始めるのかと思った矢先。ベースの大蔵倫太郎が鳴らし始めたのは、耳障りにも思えるうねりを伴った重高低爆音。
そこに同調するようにドラムの保田優真が不定形のビートを刻み始める。
キーボードの田中利幸も不安になる低和音で追随する。*25
(自分は今、何を聞かされている?長くない?いつ始まる?もしかしてこれで機材チェックになっている?ライブってこういうもんなの?)
長らく待たされ、いよいよ始まったと思ったらギリギリ聞けるレベルの渦巻く爆音を聞かされ、もう始まっているのかもよくわからない大混乱に陥っていました。もはや、「いいから早う演奏せよ!」とイライラしていた気すらします。
2分?3分?5分?このざわつくプレリュードをどれだけ聞かされていたかもわからなくなったころ、ようやく、ボーカルの杉田春音が現れました。
観客からの拍手が止んだころ、ずっと流れていた破壊的な渦音はシームレスに変遷し、ある瞬間から、雰囲気そのままに最新アルバムの1曲目である『NTM』が始まりました。
この一瞬間に、観客は沸き上がり、私も内部で何かが始まった感じがしました。あの情動は、それこそejaculatioにも似ていると今になって述懐するのであります。
このような感じでライブは進み、気付けば1時間半ほど経ち、終わってしまいました。
これ以上の詳細をここで並べ立てるのは冗長な気もしますので、奈々様の時分よろしく、感想だけをお伝えすると、
- 今回の1stアルバム「NEO TOKYO METRO」で、完全にアルバムアーティストとしての曲構成を成していた*26が、今回のライブではアルバム内外から独自の繋ぎで構成しており、一夜限りのアルバムを聴いている気になった。
- ベースが本当にかっこいい。イカした音を出す坊主頭がインパクトあり、当初からずっと気になっていたが、より印象が強くなった。
- ライブハウスというと、怒号に近い歓声で満ちていて、そこら中で飛んだり跳ねたり踊ったりするものだと思っていた。今回のライブは歓声よりも拍手の方が多かった。むしろ自分がトップクラスにハシャいでいた気すらする。自分の持ち場が脅かされることもなく、かなりお行儀がいい印象を受けた。(過半が女性客だからとかあるかもしれない)
- 演奏の質が本当に高かった。サブスクで聴いていたときよりも更に超絶技巧になっていた気がする。原曲にないソロパートが頻繁に挟まれたおかげで、各楽器の働きがよく感じ取ることができた。
- サブスクで曲だけを追いかけていたときよりも、アーティスト自体を応援するようになった気がする。目の前に本人がいて、トークからもメンバーたちで工夫して頑張っているところがよく伝わってきたことは大きい。
いやもう、すごい体験でした。
終演は終焉ではないらしい
アンコールも終わり、フロアが明るくなってもしばらく会場を離れる気になりませんでした。
周りの客に、「マジですごかったっすね!!!!」って声をかけそうになる衝動を何度も抑えていました。
少し客も減り、物販コーナーでライブ中に紹介があったドリップコーヒー*27を買い足し、ドリンクチケットでペットボトルの水を交換したので、もうこれ以上いても仕方ないと思いライブハウスを出……出ようとした……ところに……!
なんと!いるじゃないですか!新東京メンバー全員!
入口付近でライブタオルにサインをしてもらっている人がいて、
(え、マジで?)
って顔でちょっと覗いてたら*28、
「グッズを買った方は誰でも大丈夫ですよー」
というスタッフのお墨付きをいただいたので、列に並びました。(といっても今書いてもらっている人と自分しかいませんが)
前の人がハケて、私の番。
ちょうど自分もタオルも買っていたので、前の人と同じようにサインをお願いしました。
書いている間は話ができたので、感想を伝えようとしたのですが、興奮冷めやらぬ中で、自分でも何言ってるかよくわからなくなっていました。
私「(タオル出して)よろしくお願いします!」
新東京「はーい」
私「すっごくかっこよかったです!あの、今回が初めてのライブハウスだったんですけど、本当によかったです!」
新東京「お!記念すべき初陣ですね。(他メンバーに)初ライブだって」「嬉しいねー」「だいぶ前の方でしたね」
私「(観客のこと認識できるんだ、すげえ)気合入れて5番目取っちゃいました」
新東京「おー」「また名古屋来るんで、ぜひ来てくださいね」
私「はい、名古屋ならもう全然、頑張って来ますので(???)、よろしくお願いします!(?)サインありがとうございました!(お辞儀しながら退散)」
ライブハウスを出て、時計を見たら20時前。
(何言ってんだろう自分)
若干の恥ずかしさと、
(ベースかっこよかったです!とか言いたかったけど贔屓してるみたいだし言わなくて正解だったのかな)
迷いと、
(でもライブよかったな……)
一向に醒めぬ興奮と、
あとは上着を着ていないのを自覚させる寒気とで、ニヤニヤしながら駅まで駆けていきました。
この先の話。初めての野外ライブへ。
3月31日:COICE 50 (tofubeats/ STUTS/ DAICHI YAMAMOTO/ OMSB)
ライブ後の夕食は、ライブハウス近辺の中華料理屋*29を開拓しようと思っていました。
しかし、ここまで最高の思いをしてきているのに、もし残念だったりして佳い一日に水を差すのも癪だったので、咄嗟に予定変更。
『水星×今夜はブギーバック』の話をした、例のラーメン屋に行くことにしました。
このお店は非常にいい日本酒とおつまみを出すので、お気に入りなんです。
アルコールも入り、すっかりいい気分になって、マスターに今日の話をしていました。
マスター「日曜日の夜に来るの、珍しいよね」
私「さっきまで新栄でライブがあったんですよ。(中略)~~、そう*30、実はここでtofubeatsを知ったのが音楽に興味をもったきっかけで~~(中略)~~、また他のライブも行ってみたいですね~」
マスター「tofubeatsのライブ、今月末にあるみたいだけど?これ行ってみればいいじゃん。大阪だから近い近い」
私「まじすか、行きます!……チケット取っちゃったエヘヘヘ(ほろよい)」
ということで、tofubeatsのライブに行くことになりました。
正確には対バン形式(使い方あってる?)のようで、
tofubeats/ STUTS/ DAICHI YAMAMOTO/ OMSB の4人が参加するそうです。
前半2人には馴染みがありましたが、あとの2人は初めて聞く人だったので、予習しています。
5月24,25,26日:森、道、市場2024
帰路。思い出してよかった
その日の帰り道。
名古屋から三重への長ーーい電車に揺られて一日のことを思い返しながら、ふと思い出したことが一つ。
(森、道、市場……そろそろチケット販売始まってない?)
『森、道、市場』とは、毎年5月にラグーナビーチ/ラグナシアで開催される、大規模な野外ライブイベントです。
恐る恐る公式サイトを確認すると、販売期間は2月19日~3月11日。つまり来週の月曜まで。危ね~~~~!
回想。「『森、道、市場』。あれはおすすめできる」
実は去年の夏、フジロックに行こうとしていました。
新東京が去年のフジロックに初出演すると聞いたためです。
しかし、その情報を知ったのはなんとフジロック前日。
当然、チケットは売り切れていました。泣く泣く諦め、翌夏の参戦を考えていました。
その話をDJをしているらしい会社の同期にしたら、「悪いことは言わないからやめておけ」と強く反対されてしまいました。
何故?
これまで私は、フジロックといえば夏のZIPで毎年紹介されてるイメージしかなく、誰でも気軽に行けるイベントだと思っていました。
しかし、実際にはそんなに甘い代物ではないようです。
- 会場が本当に広く、ステージ間の移動が徒歩2,30分かかるのはザラにある。
炎天下で一日中立ちっぱなしなので、相応の体力が必要。(3日間フル参加した後、2日間は消耗しすぎて立てない。仕事など勿論行けないので、合計1週間くらい有休を取れる環境が必要。) - 宿泊はキャンプをする必要がある。
周辺の宿泊施設は前年のフジロックが終わったタイミングで既に埋まっている。(そもそも知り合いしか泊めないとか普通にあるらしい) - 真夏の3日間開催のため、雨対策、熱中症対策が必須。
- そもそも、野外フェスは一人で参加するものではない。
楽しいけど、感情を共有できないと空しくなる瞬間がどうしてもある。
などなど。DJ同期曰く、フジロックは「金、休日、友人、体力を兼ね備えた最強の人間だけが楽しめる最上級者向けライブ」とのことでした。
流石にフジロックは諦めました。
同時に生まれた、「じゃあ、初心者はどこ行けばいいの?」という至って自然な疑問を投げてみました。
この問いへの回答は極めて具体的にして明解。
「『森、道、市場』。あれはおすすめできる。」
『森、道、市場』は、
- 会場が蒲郡なので東海民は比較的行きやすい
- 5月の開催で体力的にかなり楽
- ショップや飲食店が非常に充実している。仮に音楽がイマイチでもショッピングで楽しめる
- 会場が整備されていてきれい
という、至れり尽くせりの環境だとか。
実際、親子連れも多いといいます。
実はこの『森、道、市場』、名前を聞くのはここが初めてではなく、
例のラーメン屋のマスターからも、去年の『森、道、市場2023』開催1日目のタイミングで紹介されていました。
ただ、そのときは琴線に触れなかったので、適当に流していました。
しかし、今となっては、求めている回答が比較的近くにあり。しかも全く違うタイミングで二者からおすすめされたとなれば、行かない理由などなく。
翌年の開催の折には必ず行こう、最悪一人でも行こうと思っていました。
ライブ翌日。チケット取れた!
ライブの翌日、さっそく友人たちに『森、道、市場』の誘いをしました。
結果、一人は自分と同じく3日間フル参加、二人は土曜日の単日参加で同行してくれることになりました。本当にありがたい。
こうして、3月末、5月と音楽イベントに参加する機会を得られました。
しばらくは退屈はしなさそうです。
おわり。音楽は趣味です
こんなところで、学生の頃から続いた音楽に対する苦手意識は大部分が払拭され、今では楽しく音楽漁りができるようになりました。
ここまでの数年で出会ってきたオススメの曲もここで紹介しようと思ったのですが、文量があまりに嵩んでいくことがわかりきっているため、またの機会に。
1.5万文字ほどもある長いこの記事を最後までお読み頂き、ありがとうございました。
*1:一時期は通学中にASMRを聞いていたりもした
*2:当時遊んでいたPSO2、アトリエシリーズ、VA-11 Hall-Aなど
*3:当時は一般的なバンドの構成でアップテンポな曲全般を「うるさい曲」と断じて嫌悪感があった
*4:かるうた。J-Popにありがちな単語(「あなた」「永遠」「指先」など)が取り札として展開され、プレイヤーの好きなJ-popを流して歌詞に出てきたものを取るかるたゲーム。J-popあるあるを話して楽しめるパーティーゲーム。
*5:このときは責める感じではなかったが、そのうち不機嫌そうにされる人が出てきてもおかしくはない
*6:Amazon Musicのプレイリスト。毎週月曜日に更新され、個人の履歴や好みから、聴いたことのない曲が自動で選択される。
*7:YOASOBI・ヨルシカ・ずっと真夜中でいいのに など、この時期流行った「夜」がつくアーティストの総称
*8:読みたい本があっても家ではゲームをしてしまうので、本を読みたいときは喫茶店に行くのが私の習慣。
*9:元々シティポップに興味があった。きっかけは、20年に遊んだゲーム『十三騎兵防衛圏』の劇中歌『渚のバカンス』。80年代J-popをサンプリングしたフューチャーファンクというジャンルを知り、なんとなく気になっていたけど、当時はピンとくる曲が見つからなかった。ちゃんと聞くようになったのはこの頃から。
*10:この頃でさえ、かつてあった「うるさい曲」への忌避があった
*11:動画のサムネイルを見ればわかるように、この曲は缶チューハイ『ほろよい』のCMで流れていた曲です。残念ながら自宅にはテレビが無いので全く知らなかったのですが
*12:feat,オノマトペ大臣 版と、feat,仮谷せいら 版
*13:小沢健二がメインのnice vocal版とスチャダラパーがメインのsmooth rap版。『今夜はブギーバック』は2種類が同時にリリースされているコラボレーション作品のため、どちらかが原曲という関係ではない
*14:昔DJをやってたとか。大将って感じではない
*15:当時。現在は休学中だったはず。
*16:例を挙げるなら、最新曲『NTM』の歌詞<人を蹴落として手に入れたサッカリンはまやかしで>は、「権威主義的な社会から脱出しようぜ、各々が好きに表現しようぜ」的なアルバムテーマを考えると、『一九八四年』オマージュかと勘繰っている。最近知ったが、ベースの倫太郎が書いた小説があり、バンド初期だけ販売された幻のファングッズになっているらしい。
*17:自家用車を持っていないため、社用車の運転中を想定している。(昼)は始業後から昼過ぎあたりまで、(夕)は陽が傾き始めるか、残業になりそうな予感がしたら流すことを考えて選曲した。
*18:なろう小説のせいで大学受験に失敗し、留年しかけ、就活まで失敗しかけたらしい。
*19:流れてきた曲は演奏できるまでアニメの先を見れないセルフ縛りをしていた。そのせいで当時既に放送終了から3か月以上経っていたのに、まだ5話くらいまでしか見ていないようだった。面白い男だった。
*20:アニメのOPは飛ばす派
*21:フェスじゃなくてフェスティバル。郡上の徹夜踊りとか毎年楽しみにしている(毎回行けてるわけではない)
*22:大雨・台風・地震の後には仕事が増える。インフラエンジニアの宿命。
*23:コンサート当日は症状が出る前で、気付かず参加してしまった。運よく友人たちには感染(うつ)さず済んだが、かなり肝を冷やした。コンサート自体は非常によかった。テクノな崩壊編の音楽を違和感なくフルオケに落とし込んでいて感心したし、『渚のバカンス』を生で聴けて本当によかった。
*24:射精
*25:表現力か音楽用語知識が足りない。強いて喩えるなら、PS2の起動音をメタリックに禍々しくしてバンドで再現した感じ??
*26:曲間の連続性や全体としてのメッセージ性から。これまでのEPでもあったが、より強く感じさせた
*28:事前にチケットか何かで予約している人だけのサービスだと思っていた。あと、PSO2のオフイベに参加したとき、開発陣へ自然発生したサイン列をスタッフが迷惑そうに散らしていた光景がフラッシュバックした。
*29:雲南料理というちょっとレアな地方料理を提供する店員も客も中国人ばかりの店
*30:ちょうど店内BGMで流れてた